【福岡ボート(サマータイム)GⅠ周年記念】「開き直ったら優勝が転がり込んできた」石渡鉄兵が逆転で福岡周年を初制覇

福岡ボートのGⅠ開設72周年記念「福岡チャンピオンカップ」(優勝賞金1200万円)は最終日の18日、12Rで優勝戦を行い、1号艇の石渡鉄兵(50)=東京・74期=が1周2Mでの大逆転劇で勝利。通算87回目、GⅠでは昨年6月の蒲郡周年以来6回目のタイトル獲得となった。
2着は3号艇の茅原悠紀、3着は4号艇の宮地元輝で、2連単、3連単ともに1番人気という本命決着。
6日間の総売上額は66億9200万3700円(目標額70億円)で前回実績(昨年12月、65億円余り)を上回り、盛況のうちに幕を閉じた。
■ヒーロー
勝利の女神は見捨てなかった。「完全にミスターン。終わったと思いましたね」。結果は絶好枠石渡の勝利に終わったが、内容はまさに薄氷を踏む思い。1周1Mはインから先マイに成功したものの、2コースの篠崎元志だけでなく4コースの宮地元輝にまで差されて万事休すの展開に。しかし、1周2Mはその両者の意地がぶつかり、眼前に絶好の勝機が広がった。「開き直っていたら優勝が転がり込んできました」。的確に差し抜けると栄光のゴールが待っていた。
わずか30秒の間に天国と地獄を味わったが、勝因はエンジンパワーから来る落ち着き。「差されてはいたけど、BSで元志君よりだいぶ伸びた。すごい足をしていたので冷静にいられました」。前検から手応えは抜群で、相棒63号機には「これはエース機になりますよ」と太鼓判。強烈な機力に百戦錬磨の経験が加わり、ピンチをチャンスに変えた。
序盤から流れも向いていた。今節の前半3日間は安定板が付くほどの荒れ水面で、そこはまさにボート界屈指の波乗り巧者である〝江戸川鉄兵〟の真骨頂。「これは自分の見せ場だと。水面が悪かった序盤に成績をまとめられて勢いに乗れたのも大きかった」。エンジン抽選、天候、展開と、今節は初戦から優勝戦まで全ての流れが石渡に向いていたと言っても過言ではない。
一昨年は江戸川の関東地区選、昨年は蒲郡周年を制しており、これで3年連続GⅠV。マスターズ世代になって息を吹き返している。「やっぱり息子(131期の翔一郎)がデビューしたからですかね。すごく励みになっている。これでまだ威張れるかな(笑)」。次節には桐生でのマスターズチャンピオンを控えるが、今の勢いなら〝名人〟の称号を得ても不思議はない。「今の勢いを殺さないように。そして11月のチャレンジカップ(福岡で開催)に戻ってきたい」。同じ世界に飛び込んだ愛息の存在を推進力に変えて、まだまだベテランは走り続ける。(森 大輔)