【熊本競輪・再開記念フェスティバル】新市街アーケードの特設コースを中川誠一郎らが駆け抜けた

アーケードを競輪選手が激走―。7月20日、約8年4カ月ぶりに再開する熊本競輪の「Re:スタートフェスティバル」(JKA主催、熊本市共催)が14日、熊本市の「サンロード新市街商店街」と「サクラマチクマモト花畑広場」であり、50メートルの特設コースを設けた商店街では自転車スプリントレース「ストリートKEIRIN in 熊本新市街」を実施。アーケード外は大雨が降りしきる中、競輪場さながらの熱気に包まれた。

目玉イベントのスプリントレースは大波乱となった。GⅠ3度優勝でオリンピアンの中川誠一郎(45)=85期=は予選第1組にさっそうと登場したが、年下の後輩・田中会心(23)=123期=に敗れてV争いから早々と脱落。ファンから向けられた歓声が一瞬にしてどよめきに変わったが、それでもレース後は「大雨警報が発令されると中止になると聞いていたので、無事に走れたことにホッとした。負けてしまったのは悔しいけど、若い力が出てくることは熊本の競輪界にとってはうれしいことですね」と後輩の躍動に目を細めた。

熊本支部8人で争われたプロの部で優勝したのは、競輪の競走成績が参加選手の中で最も低い徳永泰粋(21)=123期。足元が悪く、どうしてもコースに水が残るため各選手はタイヤが滑って苦戦。それでも徳永は気合の走りで下克上を成し遂げた。表彰式ではトレードマークの黒縁めがねを外し、マイクを向けられると「うれし過ぎて、めがねが飛んでいった。いつも練習で負けてばかりだから、こういうところで挽回しようと頑張りました」と喜びを爆発させた。

4人が競ったアマチュア部門は、左迫間昭一さんが優勝した。「(アーケード内を走る)すごい体験をさせていただいた」とレースの感想を話すと、「競輪場は僕らアマチュアも練習で使わせていただく場なので(熊本競輪の再開は)非常にうれしい」と復活を喜んだ。ガールズ2人でのエキシビションレースは、西島叶子(29)=118期=が高本美穂(21)=124期=を破って先輩の意地を見せた。

アーケードを抜けてすぐの「サクラマチクマモト花畑広場」では熊本競輪選手会の協力の下、バーチャルサイクリング体験や選手の練習用マシンでスピード測定をするなど、競輪だけでなく自転車普及に向けた試みを幅広く実施。一時、土砂降りの雨となる空模様にもかかわらず駆けつけたファンは、お目当ての競輪選手とふれあいの時間を楽しんでいた。

◆熊本競輪 1950年に開設したが2016年4月の熊本地震で被災して休止。21年10月から再開に向けた工事を開始し、先月15日にプレオープン。7月20日のFⅠ「能登半島支援・熊本競輪再建記念」で3058日ぶりとなる復活の打鐘(ジャン)が鳴る。26年2月にはGⅠ「第41回全日本選抜」の開催も決定している。
