競輪

【久留米競輪・GⅢ熊本記念】中本匠栄がGⅢ初V、中川誠一郎と抱擁号泣

 久留米競輪場で開催された、熊本競輪のGⅢ開設73周年記念「火の国杯争奪戦in久留米」は最終日の9日、12Rで決勝を行い、中本匠栄(36)=熊本・97期・S1=が、逃げた松岡辰泰を番手捲りした嘉永泰斗を差して優勝。中本のグレードレース制覇は2020年9月の伊東GⅡ共同通信社杯以来、約3年ぶり。悲願の地元記念初制覇を飾った。2着は嘉永。3着は4番手から追い込んだ郡司浩平。4日間の総売上額は53億1668万5400円で目標額(50億円)をクリアした。 

熊本競輪のマスコット・ファイ太と写真に納まる中本匠栄

■ヒーロー

 4人全員が懸命に、そして着実に仕事をこなし、熊本勢が2大会ぶりに火の国杯を奪還した。優勝した中本はGⅢ初V。「(塚本)大樹に3番手を回らせてもらった。ラインのおかげ」。表彰式を前に、目からは大粒の感謝の涙が止めどなくこぼれ落ちた。

 まずは中本がS取り。松岡が逃げ、嘉永が抜け出し、塚本が郡司や山田の侵入を防ぎ、最後は中本が追い込んでゴール。新山、郡司ら何度もグレードレースを優勝してきた強豪を、4人の共闘で撃破した。熊本競輪復活をアピールするとともに、8回にわたり熊本記念を開催してきた久留米競輪のファンに感謝のVを届けた。

 地震が起きた2016年4月は28歳。特に大きな特徴のないS級2班の自力型選手だった。17年前期にはA級へ陥落。S級に復帰した同後期には頸椎(けいつい)骨折の選手生命が危ぶまれる重傷を負った。

 だが、倉岡慎太郎らと重ねた努力は実を結ぶ。18年9月、S級初V。その後はGⅠ戦線へも顔を出し、20年9月のGⅡ共同通信社杯でV。同県のスター中川誠一郎らの陰に隠れながらも、実直な人柄とたゆまぬ鍛錬で、今ここに地元記念Vも成し遂げた。2年ぶりの大会Vを狙った練習仲間の嘉永は、「匠栄さんが勝ってよかった」とすがすがしく笑い、中川とは表彰式後に検車場で抱き合いながらともに号泣。復興へと戦い続けてきた男たちの思いがあふれ出た大会だった。

 いよいよ来年は、熊本再興のとき。今大会の最終日、若手を中心に6勝を挙げた熊本勢が、さらに大きく飛躍を遂げる。(野口雅洋)

熊本記念を初制覇し、同県の仲間に胴上げされる中本匠栄

 

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