競輪

【立川競輪・グランプリシリーズ】松浦悠士が涙のGP初V、苦しみ抜いた末の頂点

KEIRINグランプリ2023表彰式前の勝利者インタビューで思わず涙する松浦悠士

 立川競輪の「KEIRINグランプリ2023シリーズ」は最終日の30日、最終11RでGP「KEIRINグランプリ2023」があり、松浦悠士(33)=広島・98期・SS=が捲った深谷知広を差し切って初優勝した。優勝賞金1億3700万円を手にして年間賞金王に輝くとともに、通算取得賞金を10億円の大台に乗せた。2着は2角捲りの深谷、3着は松浦後位で脚をためていた眞杉匠。人気の古性優作は、4角2番手の位置ながら直線で伸びを欠き、4着に沈んだ。GPシリーズ3日間の車券売上額は140億9563万4200円で、目標の135億円をクリアした。

■ヒーロー

 カープカラーの真っ赤な勝負服で、両手のガッツポーズを繰り返した。直線で抜け出した、単騎の深谷知広をゴール直前で逆転。「うれしい、しかない」。バンク内での表彰式前のインタビューでは、止めどなく涙が流れ落ちた。「グランプリ優勝はずっと目標にしていた」。競輪選手最高の栄誉を手にし、泣きじゃくった。

 苦しい一年だったこその涙だ。3月の別府ウィナーズカップで優勝するまでは成績が残せず、「今年はダメかもしれない」と弱気になることもあった。7月に函館サマーナイトフェスティバルを勝って賞金ランクを上げたが、8月の西武園オールスターで落車。左の肩甲骨と鎖骨を折るデビュー後、最大のケガを負った。ようやく11月の小倉競輪祭で復調を感じていたが、今月上旬の別府記念決勝で落車。直前にも、へんとう腺を腫らすなど順調さを欠いた。それでも、あふれるレースセンスで頂点に立った。

 今年の最終走は、清水裕友をマーク。前受けした新山響平の突っ張りと、後ろ攻めの脇本雄太のもがき合いが、打鐘前から終1角まで続いた。脇本が出切ると同時に清水は捲りを試みたが、直前にいた深谷に合わされて浮いた。松浦は「早いかなと思ったが、待って失敗することも多かったので裕友から切り替えた。深谷さんが近畿ラインをのみ込んでくれれば、自分にもチャンスがあると思った」とレースの流れを読み切った。脚力だけではない、誰よりも的確な判断が素早くできるが故のVだった。

 「来年は、中四国の先輩後輩に恩返しをしていきたい。グランドスラムはもちろん選手としての目標。共同通信社杯も視野に入れている」と、GP、GⅠ、GⅡのコンプリートを目指す。来年は初のチャンピオンユニホームに身を包む。20年の名古屋オールスター、21年の京王閣ダービーを制した赤ヘル姿はしばらくお預けとなるが、輪界の王者としてさらに大きくはばたいていくはずだ。(野口雅洋)

 ◆松浦悠士(まつうら・ゆうじ)1990年11月21日生まれの33歳。広島市出身。広島工高卒。2010年7月、広島支部98期でデビュー(熊本①③❷)。通算成績は1200走で346勝、優勝62回。ビッグレース制覇はGP(23年立川)、GⅠ競輪祭(19年小倉)、同オールスター(20年名古屋)、同日本選手権(21年京王閣)、GⅡウィナーズカップ(20年福井、23年別府)、同サマーナイトフェスティバル(21~23年、函館、玉野、函館)。通算取得賞金は10億1568万6311円。師匠は脇田良雄。ホームバンクは広島。168センチ、73キロ、太もも60センチ、O型。

【KEIRINグランプリVTR】 2番車の佐藤がSで出て新山―佐藤、深谷、清水―松浦、眞杉、山口、脇本―古性で周回。赤板を過ぎても動きはなく、鐘前2角で脇本が8番手からカマシを敢行。新山も気づいて猛抵抗。もがき合いの決着は終1角、脇本に軍配。同時に清水は近畿勢を追おうとするが、その位置は佐藤後位で脚をためていた深谷が内から奪取。1半で清水が外に浮き、松浦は深谷にスイッチ。深谷は2角捲りで北日本も近畿両者も乗り越え、直線半ばで先頭。深谷を追走していた松浦がゴール直前で外を差し切った。2着は深谷、3着は終始松浦の後位を走っていた眞杉。古性は直線で伸びずに3着。

表彰式でタレントの中山きんに君(右)に花束を渡されて笑顔が戻った松浦悠士

 

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