【クローズアップ】吉沢 タイトルへ機は熟した 【高知】

俊敏な対応だった。吉沢純平(37)=茨城=は準決10R、終1角で吉田拓矢が内へ詰まったのを見ると、捲って前を追っていた新田祐大-佐藤慎太郎の北日本コンビにスイッチ。終3半から力強く捲り追い込んで、そのSS2人を抜き去った。「踏んだ距離は短かったが、最後は伸びてくれた。1着が取れたし、いいと思う」。ほほ笑みながら静かに勝利を振り返った。
デビュー11年目、これが通算300勝目だった。「記者の皆さんに聞くまで全く意識していませんでした。自分だけの力ではないですし」と、純朴な青年は自らのメモリアルには興味なさげ。だがふと「あっという間という気持ちもあるが、長くやってきたなという感じもある」と遠くを見た。スピードスケートのショートトラックで五輪出場。競輪に転向後も注目を浴びた。しかし落車が多く、けがに泣かされ続けた。鎖骨、肋骨(ろっこつ)の骨折はもちろん、頭蓋骨骨折、アキレス腱断裂など選手生命の危機を乗り越えてつかんだ節目の勝利だった。
全日本選抜には縁がある。ビッグ初出場も初勝利も(ともに2016年久留米)、初決勝(18年四日市)、初表彰台も(19年別府)この大会だ。そろそろ、機は熟した。師匠はG1 7Vの武田豊樹。長野出身だが茨城で弟子入りした。「武田さんの門を叩いたからには、結果を出したい」。偉大な師へ近づきたい思いは強い。「G1準決で300勝とは思い出になった。最終日に301勝目ならもっと思い出になりますね。自力で頑張ります」。近畿と北日本の対決に注目が集まる決勝で、最後にスポットライトを浴びてみせる。